クロノトリガー考察2
前回の続きです
巨人の爪にいたルストティラノ=ブラックティラノか
私はステゴサウルス登場からティラノサウルス登場までの期間の方が人類史よりも長いと昔知ってかなり驚いたのですが、恐竜の寿命は我々では計り知れません。一般に体が大きければ消費エネルギーが大きいわけですから、寿命も短いのかというとどうもそうではないようで...
話がだいぶ逸れましたが流石に同一個体というのは考えにくいかなと思います。でもそうだったらまさにロマンですね。七千万年の長きにわたり眠り続け、自らを倒した相手と再び相まみえる。素晴らしいプロットです。しかし原始においてブラックティラノと同じ個体が一体も出てきてない以上はニズベールと同じ特異個体である可能性は高く、同一個体説もあながち間違ってないかも。
サイラスとは何者だったのか(何故モンスターに?)
勇者サイラス。騎士団長にしてグランドリオンを扱えた調停者であり、彼がデナトロ山で魔王に敗北したことで人類は劣勢に追い込まれました。そこから10年抵抗を続ける人類も中々凄いですが。
サイラスの遺体はこの後モンスターたちによって北の廃墟に運び込まれ、侮辱の墓碑と共に葬られます。この無念からサイラスは現代において死霊と化しています。ですが、これおかしいんですよね。彼を殺した魔王の正体は人間なんですから。個人的に初期DBの「ナメック星人であるピッコロ大魔王と魔族」的な設定の齟齬を感じます。モンスターに殺されたものがモンスター化するのではなく、あくまでモンスターに死体を死霊化する力がある、というなら辻褄は合いますが。何かしがの負のエネルギーを死体に付与するのは間違いないのでしょう。
彼が何故調停者の資格を持っていたのか、親友のグレン(カエル)が同じ資格を持っていた理由などは以前謎のままですが、まあ彼は天から「勇者」の肩書を与えられた人間、それで十分なのでしょう。彼の意思を継ぐというのがグレンのアイデンティティであるのですから。グレンはあくまで「勇者を継ぐもの」なのです。
勇者バッジとは
グランドリオンの一部、もしくは同じくドリスストーンを加工したものなのではないかと推察します。中世本編以前からガルディア王国にはグランドリオンにまつわる聖剣伝説、救国伝説が存在したようなので、過去の使い手があつらえたものなのでしょう。某国の伝説みたく王国の創始者がグランドリオンの使い手だったのかもしれませんね。
なぜグランドリオンは魔王特効なのか
別に古代人特効な訳ではなく(笑)、魔法攻撃を阻害する能力を持つのでしょう。知っての通り魔王は魔法攻撃を主体に戦いますので、魔法を阻害されると一気に弱体化します。まあサイラスは力技で突破されてますが...
それより魔王は目の前でグランドリオン誕生を見ていたはずなのに、剣を見て「あれ?これは」とか思わなかったんでしょうかね。まあ思ってたとしても特にリアクションしそうにないのが笑えるところですが。ノスタルジーとかなさそうだもんね。
ラヴォス戦のあと、どうやって現代に帰ったのか
バケツのゲートや黒の夢から突入した場合はタイム・ゲートがあるので分かるんですが、シルバードから突入した場合は本当に変える手段が無いんですよね。まあ描かれてないだけでどこかのゲートから戻ったのでしょうし、これを突っ込むのは野暮の極みである訳なのですが。
ドラクエだといつもこの辺しっかりと描かれてますね。トコトコ歩いて帰ったり、ドラゴンの背に乗せてもらったり。それでも、自分の一番好きなのはシルバード大破時のあの風船エンドだったりします。
ニズベールは恐竜人か
特別高い知能を持った恐竜でしょう。
それにしても一度完全に消滅してたのにしれっとティラン城で前座として復活してるのには目を剥きました。どこまでもトリッキーな奴でしたね。
「アザーラならこの奥だぜ」
虹色の貝殻とは
これは謎の物質です。描写的に原始の代物でありティラン城にあったものなのでしょうが、アザーラからの言及はありませんしそれらしきものも見当たりません。何故これを守るようにルストティラノが陣取ってたのかも不明です。
しかしボッシュやハッシュの言及を見るに大変希少ではあっても古代から扱う技術は存在したのでしょう。現に加工するのはボッシュですし、最終戦のジールも持ってます。ボッシュは三賢者の中でも格落ち感がするじいさんですが、文字通り最初から最後まで出ずっぱりで一番親近感の沸く賢者さまでもあります。この爺さんは本当に運が良かった。でも、不吉な未来を知りながら最も平和な時代を過ごすというのはどんな気持ちだったんでしょうね。終わり良ければ総て良しか。
太陽石とは
ルッカの最強武器である太陽銃の素材。たいよぉぉおお!!
これも古代→未来のイベントですね。長い年月によってモンスター化したりこっちも不気味な素材であります。だいたい原始→未来までの実に65002,300年もかかる太陽光の吸収が必要な太陽石の扱い方について何故古代人は知っていたんでしょうか。文明の発達具合を見るに納得できてしまうのが古代人の恐ろしいところです。ラヴォスの力に傾倒するまで古代人はこの太陽石の力に頼っていたようなので、まあ研究されつくされててもおかしくはありません。
一度祠から持ち去られて取り戻すイベントがありますが、一度きりなことを考えると「太陽のほこら」は相当な僻地にあることが窺えます。実際ワールドマップの端っこですしね。ここまでやってくる物好きというと個人的にはトマしか思い浮かびません。
ドリスストーンとは
太古から存在する石とされていましたが、続編クロノクロスにおいて「先行して地上に落っこちて来たラヴォスの破片」という説明がされました。「凍てついた炎」なんて呼び方もされてます。クロノトリガー単体だと「地球が生み出したラヴォスに対抗するための力」という解釈でも通りますが、私は前者ではないかと。後者では何故ドリスストーンがラヴォスの力を媒介・増幅するのか、という説明が出来なくなってしまうんですよね。
私の解釈ですがこの作品では地球はあくまでクロノたちを手助けするにとどまり、直接的な影響力を及ぼしたことは一度も無いんですよね。むしろクロノたちに助けを求める形で色々な時代を見せているのでは、という台詞が作中に登場しているくらいです。この作品において「力」を行使しているのは常にラヴォスなんですよね。そして皮肉にもラヴォスのおかげで時間旅行が出来ていた事実がEDで(実際にはもっと前の段階で分かるけど)判明します。力を持って力を制すことのアンチテーゼとしてこの設定は重要だと思うんです。
グランとリオンの姉、ドリーンはどこへ消えたのか
聖剣グランドリオンに宿る聖霊はグランとリオンのほかにもう一人います。長女のドリーンです。クロノクロスの後付けで出てきたと思われがちな彼女ですが実はクロノトリガー時点でしっかり登場しています。眠りの都エンハーサにおいて場所を移動しながらクルクル周回してます。
グランとリオン兄弟が「風」を象徴している存在なのに対して彼女は台詞から「夢」もしくは「眠り」を象徴する存在です。クロノトリガーの時代には文字通り「眠っていた」ということなんでしょうかね。この頃ナイフを持つボッシュは予言者によって嘆きの山に幽閉されていたので、彼らの実体は嘆きの山にあることになります。彼らはグランドリオンから思念を自由に分離できるということです。そうすると、ドリーンだけどこかでフラフラしていても別におかしくはないわけですが...
三人が目覚めた状態が真のグランドリオンである、という設定はおそらくこの頃からあり、サラの行方をぼかしたことを含めて次回作の布石を感じることができます。あまりにも単体で傑作足りえたゆえに、続編が期待を超えられることなく迷走してしまった訳ですが。
沈んだ黒鳥号の行方は
ガッシュが作り出した飛行戦艦「黒鳥号」
明らかに作中でも抜きんでた技術力を示しています。理の賢者ガッシュはやはり天才の中の天才だったのでしょう。この人抜きで「トリガー」も「クロス」も存在しません。
黒鳥号はシルバードに搭載された物騒な装備によって大破し海中に沈んでいった訳ですが、その後何のフォローもされません。沈みっぱなしです。てっきり後のストーリーに絡んでくるか、「あれがそうだったのか!」的なカタルシスが得られるかと思ったのですが...
ヤクラ13世の知るクロノらの「弱点」はどこから伝わったか
ヤクラ。最初のボスであり、さらった姫を殺して食ってしまおうというクッパポジにあるまじき中々衝撃的なボスでした。外見的なビジュアルも醜悪で何より強く初ボスとして文句なしの敵でしたね。そんなヤクラの子孫であるヤクラ13世。大臣をさらってなりすましストーリー冒頭から最終盤まで主人公たちをひっかきまわしてくれました。主人公たちが未来へ逃げざるを得なくなったのもこいつのせいですし、何気に地球の未来を変えた最大の立役者だったりします。ストーリーの最終盤ついに正体を現すわけですがこの時の懐かしさとどこか笑える気持ちは皆さん分かっていただけるかと思います。
上空からの針攻撃は最初のヤクラからプチラヴォス、ラヴォス外殻(第一形態)と一貫して主人公たちの弱点(被ダメージが凄まじい)として扱われてます。ヤクラ13世は戦闘中「先祖から聞いて知っているぞ」という台詞と共にこの技を放ってくるわけですが、ヤクラが倒された時に傍で見ていた魔物はいません。まあどこかに隠れて見ていた敵がいたと考えるのが自然ですかね。前置きが長い割に大した結論じゃなくてすみません。
ダルトンの消えた先は
女王の側近である宮廷魔導士。言動の全てがどうも小物臭いキャラクターですが主人公たちを一度は倒して捕まえるなど実力はあるので評価が難しいです。スカイ・ダルトン・ギョクーザ改造シルバード上での戦いでマスターゴーレムを召喚するも、既に倒されていたため自身がどこかに吸い込まれての退場となりました。この召喚魔法についても謎が多いのですが、描写的にタイム・トラベルというよりFF5的な次元のはざまに放り出されたイメージでした。
PS版にて出番が追加されるまでは。
どうやらタイム・トラベルして現代に飛ばされたらしく、次元のはざまの最深部にて勝負を仕掛けてきます。戦闘後に負け惜しみを言ってまたも逃走していくのですが、これが意味深。「俺はパレポリを軍事国家にしてお前たちの国を滅ぼしてやるからな!」後味の悪いことにこれでPS版での出番も終了で、現代に戻ってもパレポリには何の変化もありません。クロスにおいてもダルトンは影も形もありません。
しかしクロスにおいては本編から5年後のA.D.1005年にガルディア王国は滅ぼされ、グランドリオンも誰かに持ち去られてしまうという歴史になっています。その裏にはダルトンがいた、ということにしたいのでしょうが個人的には町が僅か5年で他国を滅ぼせるような国へ発展するというのは何をどういじっても強引すぎると思います。王国が5年後に滅びるという設定はクロスが発売時からあるものなので今更糾弾するのも気が引けますが...いずれにしても無理があります。クロスの中で語られてないだけで国王はダルトン...というのも考えにくいよなぁ。何より嫌すぎる。
時を喰らうもの(裏ボス)は何なのか
本編で倒されたラヴォスの残留思念。そのままクロスのラスボスでもあるので話の都合上トリガーにて倒すことはできず、最後はサラの最後の力で過去に送り返されることになります。
興味深い点がいくつか。まずトリガーでは「夢喰い」となっていること。なぜ「夢」なんでしょうか?ドリーンの例もありこの点非常に意味深です。「夢喰い」が「時喰い」になるのはどうしてなのか。次にこの時点では大人の状態で取り込まれているサラが、クロスラスボス戦での対面時は子供になっていること。この時点でサラはセルジュに調停者の権利を明け渡し、更に自分の分身としてキッドを生み出すなど自分自身を切り分けるような行動を連続して行っています。その反動なのでしょうか。あるいはトリガーで言っていたように、ラヴォスと一体化が進んだ結果が子供の姿(=自我が消えつつある)ということなのでしょうか。
スペッキオは何者なのか
自称「戦の神」スペッキオ。見る者の強さに応じて自らの姿を変え、最終的にその姿はヌゥとなります。ハッシュのほかに時の最果てにいる唯一の人物?であり、古代に起きた事件も知っていて、魔法が失われた後の時代の人間に魔力を与えたり、ハッシュとも気心の知れた仲であることが窺えたりと謎が満載のキャラ。ヌゥはどちらかというとマスコットキャラクターに近い存在なのでストーリー上でも重要な役割を果たすジョーカーキャラは彼とベッケラーの二人でしょう。
まあ、おそらく本当に神のような存在なんでしょうね。とてもそうは見えませんが。
ヌゥって結局何なの?
本筋に関わることはないものの、ストーリー中しばしばその姿を目にするヌゥという生き物。古代の隠し部屋にあるガッシュの本に「全ての生物はヌゥに始まりヌゥに終わる。このわしがいうんだから間違いあるまい。ふふーん」と書いてあったり文明が発展している古代でやたら多く見かけたり。おそらくはより地球の意思を敏感に感じ取れる先人類のような存在なんではないかなと思います。
やたら寿命が長いことも明らかになっており、古代から現代まで生きた(封印された)個体が存在しているほかPS版で追加された「竜の聖域」という恐竜人の生き残りが暮らす地域では古代~中世までの約七千万年を生きる同一個体が確認されており、しかもまだまだ若そうである。数こそ少ないが一千万年単位の寿命を持っているんだろうと推察されます。
番外編 クロノクロスというゲーム
「クロノトリガー」という歴史上類を見ない傑作の続編として生み出されたこのゲームは、その暗いシナリオと前作とはまるで異なるグラフィックや操作性の悪さ、キャラクターが多すぎるなどの要素から駄作として非常に低い評価を受けている。個人的にもやり直そうという気になれないゲームなのは確かである。
クロノトリガーの時点で伏線となる謎はそれなりに残されており、続編を作ろうと思えば作れる状態にはあった。問題はこのゲームの完成度が非常に高く、新しい要素を盛り込むには許容される幅が狭すぎたことにある。ユーザーは正当な続編を望んでいたのに、制作側が自分たちの作りたいものを実験しすぎたのだ。音楽だけはトリガーほどではないが名曲揃いだったと思う。
グラフィックや操作性を許しても圧倒的にアンチが多いのは悲劇的なストーリー展開が理由なのは疑いようもないが、私は結構この作品のストーリーが好きである。もちろん「トリガー」の方が何倍も好きなので制作側の「クロスはパラレル」という言葉は大いに歓迎するところだが、それを踏まえても中々骨のあるストーリーだと思う。
「殺された未来が、復讐に来る。」
栄枯盛衰、揺り戻しというのは万物に起こるものであるし、クロノたちの活躍によって存在を「なかった」ことにされた者たちの復讐劇という目の付け所は素晴らしいと思う。それら有象無象の怨念をラヴォスの思念が取り込み、肉体を失って時空を彷徨うサラをも取り込んだという設定は前作での最大の謎であるサラの行方にしっかりとフォーカスしており、少なくとも及第点には達している。他にもドリスストーン=グランドリオン=凍てついた炎がラヴォスのかけらである、など前作での謎のいくつかをしっかりと種明かし(あくまでクロスでは、ということだが私はトリガー考察の上でもしっくりくる説得力があると思う)してくれているし、ストーリーはともかく設定の補完としては十分な意義があった。
何よりユーザーが受け入れがたいのはクロノら現代組が三人とも既に故人であるという展開だろうが、歴史を変えた三人がその代償として死ぬというのは、ハッピーではないにしてもビターな魅力をどこかに備えている。それにしてもパレポリの件は強引すぎるが。ミゲルとの対決の場にある壊れたマールディアの鐘と積み上げられたがれき、それに差す夕陽には胸に来るものがあった。
何より、歌でラスボスを倒すというのが粋ではないか。エンディングの「盗めない宝石~ラジカル・ドリーマーズ」はPSソフトの中でも指折りの名曲だと思う。
「トリガー」が傑作として名声を高めていくなか、同じ土俵で勝負しても「クロス」に勝ち目はなかった。超えることなどユーザーは望んでいなくても、制作陣に同じことを望むのは酷である。変化球での勝負を余儀なくされたクロスを、どうかもう少し温かい目で見てはいかがだろうか。私はこの作品がそこそこ好きだ。
あとがき
というわけで長くなりましたがクロノトリガーの考察記事でした。考察記事を書くにあたり驚くほどクロスの設定が活きることが多く、作品としては三流でもトリガーの補完にはかなりの貢献をしている作品だったのだなぁと今改めてその存在を評価しています。少なくとも設定資料集なんかでまとめて開示されるよりはそれを基に一本ゲームを作ろうとした姿勢を評価したいところです。
それでもクロスをリプレイすることはないでしょうが。今後もさらに謎が出てくれば追加したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!