久しぶりに書評(ほぼ漫画だけど)を書きたいと思います。第2弾は松本大洋先生の「ピンポン」!
私のバイブルであり正直語りたいことが多すぎるんですが、何とか短くまとめます。
言わずと知れたけっっっさくまんがです。アニメ化もされてました。私は見ていないのですが、映画がかなりヒットしたらしいですね。中村獅童さんがドラゴン役だと聞いて思わず何度も頷いてしまいました。本当にイメージ通り。
余談ですがワンピースの尾田栄一郎さんは尊敬する漫画家としてよく松本さんの名前を挙げてますね。画風も作風も全然違うけど。あとはブリーチの久保帯人さん。主にジャンプ作家中心にいろんな方に影響を与えてます。
まずはこれ見てみて下さい。アニメ版の公式ダイジェスト動画ですがピンポンの魅力がとてもよく纏まっています。素晴らしい出来です。
https://www.youtube.com/watch?v=5XSHvXT2DpU
ピンポンは「ペコ」と「スマイル」という二人の卓球少年を中心に展開する物語です。インターハイ予選を軸にしながら卓球に命を賭ける少年たちの戦いを描き切っています。全3巻(現在発売中の文庫本準拠)。
1巻は、天才的なセンスを持ちながらも怠け者である「ペコ」が才能だけに頼る戦い方に限界が訪れ追い詰められていく一方、ペコの影に隠れていた親友の「スマイル」(表紙)が次第に頭角を現していくという内容。
インハイ予選の屈辱的な結末から再起をかけ必死の追い上げをするペコと、着実に経験値を積んでいくスマイル。鍛錬の長い冬を2人を取り巻く周囲の人間を含め描写する2巻。
再び訪れたインターハイ予選。ペコとスマイルの「約束」の結末を描く3巻。
この漫画の最も素晴らしいところはなんといっても主要人物ひとりひとりの心情描写を丹念に描き切っているところです。ペコとスマイルのふたりはもちろん、二人の幼馴染である「アクマ」や王者「ドラゴン」、卓球エリート"上海ジュニア"落ちの留学生「チャイナ」など個性的な人物たちそれぞれを深く描写しています。
私はスポーツを本気でやったことのないヘタレですが(高校の時本格的な少林寺の部活に入部しましたが半年で潰れました)、上記アクマの叫びは深く胸にくるものがありました...優劣が明確に付く非情な勝負の世界。一方で王者ドラゴンの「敗北への恐怖と渇望」のような常人には共感しがたい難解な心情もしっかり描いており、登場人物それぞれに対して等身大の人物として自然に感情移入できます。
それぞれが皆複雑な思いを胸に勝負に臨むなか、一人だけ卓球を心から楽しむ「ヒーロー」がいます。すっかり堕落していた彼は努力を経て、3巻でついに帰ってきます。そしてヒーローと出会った者は皆救われるんですね。
読めば言いたいことは分かっていただけると思います。ハードボイルドな殺伐とした世界観に挟み込まれるこういった抽象的、観念的な描写が松本大洋の真骨頂です。ヒーローは決して架空の存在じゃない。
作品のハイライトはやはり3巻のドラゴン戦だと思いますが、誰よりもヒーローに救われたのはドラゴンだったのではないかと思います。最後のペコVSスマイルの結末はどうかご自身の目でお確かめください。
そんなこんなで今回はピンポンの書評を書いてみました。
好きなものの良さを言語化するって難しいものですが、本は他のものより更に抽象度が高いので難易度MAXです。今回は大ファンである松本先生の著作の紹介とあって気合入れて書きましたが、書きたいこと半分も書けてないような...そんなものでしょうか。
長くなりましたが、これを見てピンポンに興味を持っていただけたり再読のきっかけになったりすれば嬉しいです。最後までご覧いただきありがとうございました。
<出典>
・松本大洋「ピンポン」 1~3巻 小学館文庫 2014年(第2刷)