先日、「修理、魅せます。」という動画をYoutubeで拝見しました。
https://www.youtube.com/watch?v=9saAhLMTEpQ
とある時計技師さんの修理風景を取り扱ったものですが、時計修理がいかに緻密で繊細な作業であるかを改めて理解。動画の視聴後しばらく手持ちの時計の作動音に聞き入りました。まさに未来に受け継ぐべき匠の技ですね、できればそこに関わる仕事がしたいのですが...
今日はロービートとハイビートの違いとメリットについて、それぞれの特徴をまとめてみました。
ロービート(5振動/1秒~7振動/1秒)の特徴
・ハイビートに比べ精度が低い傾向(オールド品に限る)
・振動、衝撃に弱くデリケート
・油飛びが起きにくい=メンテナンス頻度が少なくて済む
・部品の摩耗が起きにくい=同上
・国産オールドではエントリー機、普及機に多い
・現行品では国産時計や一部のスイス高級機に採用
ハイビート(8振動/1秒~10振動/1秒)の特徴
・ロービートよりも高精度(安定している)
・振動、衝撃に強く精度が落ちにくい
・油飛びが起きやすい=定期的にメンテナンスが必要
・部品の摩耗が起きやすい=同上
・国産アンティークでは高級品に採用
・現行機械式時計の殆どの割合を占める
僕が把握しているのはこんなところです。
ロービートはよくも悪くも単純ゆえに扱いやすいといった印象です。一方ハイビートは手間がかかるものの精度が安定しているのが強みです。8振動から先がハイビートと呼ばれる機械になり現行の機械式時計も8振動が標準。部品の摩耗スピードと精度との釣り合いがとれるのが8振動なのでしょう。過去にはなんと20振動の機械が作られたこともあったそうですが、量産で採算が合うのは10振動までだったようです。
参考までにクォーツの振動数は世界初のクォーツ時計であるセイコー「アストロン」で約8200Hz、現在では約32700Hz(≒32000振動)が標準だそうです(セイコーミュージアムHP『クォーツ時計の誕生』より)。単位が違うので単純に比較することはできませんが、いかにハイビートといえども比較にならない精度を誇ることが分かります。こうなるとクォーツ時計が浸透するにつれ機械式時計は正確な時を測るという「道具」としての立場を追われ、「芸術品」「嗜好品」という枠で勝負することを余儀なくされます。
ハイビートが"精度"という看板を失ったことで部品の摩耗が少なく長期的な安定稼働が見込めるロービートの長所が見直された側面もあったようです。シチズンのクロノマスターに見るように、ロービートでも追い込みによってクロノメーター規格を満たす精度を上げることは可能です(シチズンHP「CITIZENのキセキ」より)。本来はあまり向かないロービートでの精度の追及は職人による手間のかかった丁寧な作業をアピールしやすいためか、現在は高級時計メーカー、とりわけ芸術品としての価値に重きを置く雲上時計にロービートのモデルを見ることができます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<参考資料 一部紹介>
https://museum.seiko.co.jp/knowledge/Quartz01/
徳永時計開発室「Q&Aコーナー」
https://www.tokunaga.ne.jp/develop/qanda.php
RAZIN WEB MAGAZINE「ロービート?ハイビート?機械式時計の振動数による違いを解説」